AnsoftS PITZA バージョンアップのお知らせ(R2023 rev.2)

弊社の半導体パッケージ内部熱インピーダンス抽出&分析ソフト AnsoftS PITZAがR2023 rev.2へマイナーバージョンアップされました。

追加機能

  • 全体的な安定性の向上
  • 対応する測定装置の追加(アンソフト・スピリット社およびコぺル電子製の過渡熱抵抗測定装置)
  • シーメンス社MicRED T3Sterデータ読み込み機能拡張
  • 最適カットオフ点探査機能の向上
  • Open Modelicaモデル生成機能の安定性向上

過渡熱抵抗測定法により被測定デバイスのジャンクション温度を測定した後、デバイス内部の累積熱インピーダンス(構造関数)を求める場合に最も悩まされるのが「オフセット点をどこに設定すれば良いのか?」と言う問題です。 過渡熱抵抗測定法の標準規格であるJEDECのJESD51-14規格ドキュメントには、このオフセット点の設定に関するより具体的な説明やオフセット校正処理で用いる外挿補間関数(経験式)そのものの理論的妥当性が十分に示されていない為、測定経験が浅い方や難解な測定法の原理を十分に理解されていない方にとって、得られた構造関数の妥当性を判断し、精度の確認を行うことは容易ではありません。

具体的には、過渡熱抵抗測定法では測定ノイズの影響が大きいスイッチングノイズ領域(使用する測定装置と測定対象デバイスにより異なりますが、おおよそ測定開始から数10~数100μ秒近辺)に対するデータ校正処理が必須なのですが、これに対しJEDECのJEDEC51-14 測定法ではこの領域の後ろ側にオフセット点と参照点の2点を選び、経験式を用いて外挿補間(Offset Tuning処理)を行います。しかしJEDEC51-14にはこの2点をどこに選ぶべきかについて理論的で明確なガイドラインが示されていません。よって最適なOffset Tuning処理を行うには過渡熱抵抗測定法の原理を十分理解した上で試行錯誤を繰り返し経験を重ねることが必要となります。また最適なオフセット点と思っていても、 2点の僅かな取り方の違いで構造関数の結果が大きく異なってしまい、元々の測定自体に問題があるような場合もあります。

これらの問題を改善することを目的にAnsoftS PITZAに新に追加した機能により、より確実に最適オフセット点が求まるようになりました。ですので測定経験が浅い方や複雑難解な測定法原理を理解されていない方でも信頼性の高い構造関数が得られるようになりました。

また、得られた構造関数結果は1D熱回路シミュレーションモデル(無償で入手可能なOpenModelicaおよびANSYS社製 TwinBuilder)として出力することが出来ます。これらのシミュレーションモデルには測定と同じ条件が自動的に設定されていますので、シミュレーションモデルの解析実行ボタンをクリックするだけで実際に行ったのと同じ測定がバーチャルに再現でき、この結果と元の実測波形を比較することで構造関数の妥当性が容易に確認でき、測定結果の精度・信頼性を定量的に判断することが出来ます。

更に妥当性を確認した後に期待されるのが、測定結果の設計・開発への応用展開ですが、AnsoftS PITZAは抽出された構造関数値を用い3次元熱流体CAE解析モデル( ANSYS社製 Icepak) を自動生成することが出来ますので、測定したデバイスを実装した基板や、デバイスを組み込んだモジュール機器等の熱解析シミュレーションによる設計・評価に速やかに繋げて行くことが出来ます。

  MOSFETパッケージ周りの温度上昇の様子(パッケージ内部を構造関数から得られた熱回路でモデル化しANSYS Icepakで熱流体解析を実施)

煩雑、難解と言われることもある過渡熱抵抗測定法ですが、今回のバージョンアップでより身近で簡単なものになりました。
AnsoftS PITZA R2023 rev.2 追加新機能の詳しい内容につきましては弊社までお問い合わせください。